カテゴリー別アーカイブ: 「440Hz」

著書「440Hz [Kindle版] 」に関連するネタ

【また忘れてた】オーナーライブラリ改メ、KENP2015年12月度

もはやブログを持っていることすら忘却していたこと、反省しきりながらも表題の件。

2015年の12月度のケンプは0.89円@1ページとのことです。
スタート時が1.29円で前回が0.94円なので下がりトレンドですね。

そんな感じ

【振り返り】2015年のKDP【総括】

さて、KDPにおける2015年の振り返りです。

・2015年1月 「Two Years in KDP」配信開始

年初にKDPでの活動二年間を振り返った作品を出しました。
感覚的には5年以上前に出したような気がするのですが、1年経っていないとは驚きです。

・2015年3月 「LANDLADY GunSu ver.」配信開始
2014年の11月に月刊群雛に寄せた作品を無料配信しました。
こちらは現在配信停止し、「TRILOGY」という3部作品にまとめて無料配信中です。

・2015年3月 「440Hz -LandLady-」配信開始
上記の 「LANDLADY GunSu ver.」に大幅加筆した「440Hz」のナンバリングタイトルです。

・2015年6月「Timber!」を月間群雛7月号に寄稿
文字数4,000文字の掌編を寄せさせていただきました。
初の三人称作品で、舞台はアメリカ。
こちらも無料配信中の「TRILOGY」に入っています。
こちらも加筆版を年内に出そうとしていましたが、進捗は6割ほどです。すみません。

実は2015年後半もけっこうガシガシ書いていましたが、まだ公開しません。
原稿用紙六十九枚分の短編と二百七十六枚分の中編を完成させています。
「書いたらすぐ出せる」を実現できるのがKDPのキモですが、今回はちょっといろいろ考えておる次第です。
こちらは2016年中に出す予定となっております。

KDPについて、あんまりやってなかった気がしていましたが、振り返ると結構注力してたっぽいです。
そんな2015年でした

【忘れてた】オーナーライブラリ改メ、KENP2015年11月度

はい、レポート来次第アップしていましたが、今回(も)いろいろ忙しくて忘れてました。

KDPのセレクト登録してある作品について、レンタルで1ページ読まれるとどんくらいの分配金があるの? に関する定点観測でございます。

『KDP セレクト グローバル基金の 11 月の金額は 15 億 9,000 万円』
10月度は『15億2,500万円』。
6,500万円増額していますね。

んで、1ページあたりの金額は……10月と同額の「0.94円」
バジェット増えても金額変わらないということは、ケンプで読まれるページ数が増えているということですね。

そんな感じ

オーナーライブラリ改メ、KENP2015年10月度

はい。ケンプの分配金の10月度出来高です。
完全に忘れていました。

KDPのセレクト登録してある作品について、レンタルで1ページ読まれるとどんくらいの分配金があるの? に関する定点観測でございます。

『15億2,500万円』(9月は『14億4,100万円』)を原資として、1ページあたり0.94円(10月度0.97円)との事です。

バジェットが増えているにも関わらず、1ページ辺りの分配金が下がるということはケンプで読まれるページ数が増加したということですね。

つづく

【プライス】TRILOGY【マッチ】

先般お伝えしましたとおり、従来のプライスマッチ無料作品を集約し、「TRILOGY」というタイトルでまとめました。収録作既存二作品を入れ替えで下げました。

あと、『Five Months in KDP』も後に出した『440Days in KDP』と内容のカニバりがあったので、下げました。

著者ページがすっきりしてよかったです。

んで、無料化した話は、ここではじめてするはずで、私自身15分くらい前に気付いたのですが、すでに20冊位DLされていて、摩訶不思議です。

そんな感じ

【群雛掲載】トリロジー【整理整頓】

Amazon著者ページを見てたら、もう一作品入れると2ページに分割されるなあと考え、作品を整理することにしました。

月刊群雛に掲載された三作品をトリロジー・ボックスとして再編集し、いまバラバラに配信されている以下の作品をプライス・マッチされ次第下げようかと思います。ちなみにもう販売されていますが、無料化までお待ち下さい(買わないでね、と言っています)

・Apache GunSu ver.: (ギター小説『440Hz』シリーズ)

・LANDLADY GunSu ver.: (ギター小説『440Hz』シリーズ)

こちらを削除の上、『Timber! GunSu ver.』収録のものを再配信するという感じです。

目的としては、冒頭にあった整理然りなのですが、
同系統のものならば、バラけているよりも一作品に集約されている方が読む(DLする)立場としても楽という点もあります。
三作品そろったのでトリロジーってのもちょうどいいなと感じました。

要するに、バラになっているバージョンをDLするなら今のうちです、という告知でした。

そんな感じ

オーナーライブラリ改メ、KENP2015年7月度

はい。定例の共有なのですが、
7月度からレンタルにおいての分配制度が変わったことについては先般お伝えしたとおりです。

んで、早速レポートが来たので紐解いてみました。
セレクト登録されたKDP冊子がレンタルで1ページ読まれる毎に0.6円
すなわち100ページ読まれると60円の収益という話でしたが、実際は上回る金額でした。

6月の分配金グロスが14億1,300万円で、7月度は13億7,000 万円。
若干減っているものの、ページあたりの分配額は……「1.28円」!
想定の倍以上です。

100ページ読んでもらえれば「128円」
拙著299円『440Hz』は通常販売で収益が209円ですが、ページ数412なのですべて読まれると
412 × 1.28円 = 527円!
99円ものは1冊あたり35円の収益で、ページ数が40
40 × 1.28円 = 51円!

おっと、通常販売よりもだいぶ有利な条件です。

ちなみにこの仕組みは『KENPC (Kindle Edition Normalized Pages count)』と呼ばれていますが、レポートでは文字数の関係なのか『KENP (Kindle Edition Normalized Pages)』と微妙に短くなってました。

といった次第で、今後はケンプと呼称します。忘れなければ

つづく

『440Hz -Wandaring Wolves-』5~6話飛ばして7話

『1978』の習作ながらも、5~6話はモロに採用してしまっているので、そこは飛ばして第七話。
ちょっと『440Hz』の海洋大学学食ネタを踏襲している感じですね

『440Hz –Wandering Wolves』 ■第七話■「定食」

 去年の春先に見た映画のテーマ曲を、学友にレコードから録音してもらったテープで耳コピーをしていたので、ひたすらそれを繰り返して弾いていた。曲名はどうしても思い出せない。「カバなんとか」だったか。ディープ・パープルのボーカルみたいな名前だったような気もする。気付くと時計は正午をまわっていた。ギター弾いているとあっという間に時間が過ぎる。しかし、ヒラちゃんが帰ってくる気配はない。俺は出直すことにした。ギターを置いて、コタツの電源を切りヒラちゃん宅を後にする。この後の事はメシでも食って考えよう。
 
 俺の下宿とヒラちゃんの下宿のちょうど中ほどに、裏道から商店街につながる路地がある。その一角には昼時には定食を出す居酒屋があるので、そこに向かった。
 遠目から見ても、昼時なので賑わっているのがわかる。引き戸を開けて入ると、「らっしゃい!」と声をかけられる。他の客は俺の体躯を見て一瞬会話を止めるが、直ぐに歓談を再開する。ざっと見た感じ、平日の昼間っから酒を飲んでいる奴が殆どを占めている。近くにある商店街の店舗は大体自営業だから、そんなことも許されるのだろう。テーブル席で帽子を脱いで、タクシーの運ちゃんが三人でビールを飲み合っているのは少しひっかかるが。
 カウンター奥にひとつだけ席が空いていた。俺はそこに腰かけてカウンター内のメニューを読む。

『煮込み定食』ここの一番人気だ。そこらの焼肉屋よりもいいモツを使っているんだろう。歯ごたえと脂の甘さは定食屋メニューとは思えない。汁がしみ込んだゴボウともいいコンビネーションだ。そして、盛り付けるだけなので、頼むと一分以内で出てくる。だが、これを頼むと酒が飲みたくなる。

『ミックス・フライ定食』漁港が近いだけあって、揚げたてのアジ、ホタテなんかのフライは絶品だ。揚げ物とは思えないほど、サックリと衣が軽い。けど、これは頼むと時間がかかる。そして他のものより値が張る。

『唐揚げ定食』同じ揚げ物であるミックス・フライと違って、出てくるのが早い。居酒屋定番メニューだし、昼間っから酒を飲む客がツマミに頼むことが多いからだろう。味は普通だが、量が多い。腹を満たすにはうってつけだ。

『煮魚定食』魚介類なので、これももちろん美味い。出てくるのもフライより早い。だが、俺にとってはボリュームが少なすぎる。焼き魚でも同じだな。二日酔いの時に一度だけ注文したが、その時でも物足りない量だったな。女子供にはちょうどいいかもしれん。が、女子供はここを訪れない。

『生姜焼き定食』抜群の安定感を持つエースだな。他の定食は居酒屋とは思えない上品な味付けで、それはそれで美味いんだが、やはり俺は少し野趣がある方が好みだ。ここのは豚肉も厚めだし、味も濃いめだから食いでがある。

 ちらりとカウンター席の客を見ると、どいつもこいつも煮込みをツマミに一杯やっている。
 俺は流されるのは嫌いだが、この空間にいると、俺の方が異質の存在みたいだ。酔客の中で一人だけメシをかっこむっていうのは、なんだか格好が悪いような気もする。

「おばちゃん、煮込み。ビール中ビン」
 結局頼んだ。

 俺は注文したものを待つ間に、ちょうど自分の右手側にある雑誌棚から一冊とりだし、ハイライトを口に咥える。雑誌をパラパラめくると、広告が目に留まる。パイオニアの新作カセット・プレイヤー。どうやら初のステレオらしい。技術は日進月歩だな。それより去年出たばかりのMTRが欲しいところだ。ヒラちゃんあたりがそろそろ買いそうだが。
「お待ち」
 抜栓され、グラスを被されたサッポロの中ビンビールと、煮込みの入った深皿が目の前に置かれた。早速グラスにビールを注ぎ込んで、一気に飲み干す。
 うん、こいつはいい。二月の空気は冷たいが、乾燥もしているから喉が渇いていた。もちろん昼間の飲酒に背徳感はない。爽快感が走る。
 もう一杯注ぎ込み、煮込みに箸をつける。やはり、ここのモツは上品だな。表面の脂が甘くとろける。ただ、上品すぎるからもっと肉っぽさが欲しい。俺は生姜焼き定食も注文した。散財だが、しょうがねえだろ。来週にはレッスン料も入るしな。よし、ビールももう一本頼むか。
 俺は雑誌をめくりながら一気に煮込みを平らげ、追加のビールと生姜焼き定食が来るタイミングで、はじめの一本飲み干した。生姜焼きの量もなかなかだが、メシの盛りがハンパじゃない。茶碗でなくて、丼で来る。あとは味噌汁。魚のアラでダシを取っているのか、磯の香りがいい感じだ。癖になる味ってやつだな。ゲイン強めの低音弦を、ブリッジ・ミュートでザクザク刻む感覚だ。
 三分の一程生姜焼きをツマミにし、ビールの二本目を空にして、一気にがっつく。添えてある野菜も他の定食だと残しがちだが、生姜焼きの濃いめのタレを絡めながらそれも平らげる。すこしは栄養バランスも考えないとな。漁師は体が資本だ。
「ごっさん」
「はい、毎度」
 勘定をし、ハイライトを一本だけ吸い終えて、定食屋を後にした。

つづくかも

『440Hz -Wandaring Wolves-3~4話

※本作品は『1978』配信前の習作(というか、元になっていたけど方向転換したもの)で、正式版ではありません。
とはいえ加筆修正後に、いつかパッケージングするかもです。

『440Hz -Wandaring Wolves-』 ■第三話■「ラージ・ヘッド」

 1980年2月なかば。内容の出来、不出来は兎も角として、後期試験を終えて俺は多少時間を持て余していた。
昨年末に不祥事を起こしてしまったバイト先の楽器屋は解雇(クビ)にこそならなかったが、女主人の『しばらく顔を見せるな』という言葉で謹慎処分になっていた。そのまま後期試験に突入し、さらにキサラギの懇願でギターを教える羽目になったのだ。
そうはいっても、収入がない状況で多少なりともレッスン代をもらえるのだから、おおっぴらに文句は言えない。逃げ場がない現状も、よく考えてみるとキサラギの計算な気がしてくる。いいや、無駄な考えはヤメだ! 俺には果たすべき義務がある。
「ハリー、再開だ」
「はい」
 各々スタンドからギターを掴む。
 俺の愛機はフェンダーUSAを元にカスタマイズしたものだ。バイト先が楽器屋だったおかげもあり、パーツの調達は容易だった。
 ラージ・ヘッドを活かすためにネックはオリジナルのままだったが、フレットは交換をしている。幅広のものを用い、平坦なフレットをえぐるようにスキャロップ加工を施してある。この加工によって指離れが良くなり、チョーキングも容易になるため演奏に余裕が持てるのだ。ヤスリを使った微妙な加工作業だったため、納得がいくものが出来るまでに四本無駄にしたが、これも楽器屋の特権だ。ペグやピック・アップも交換しているが、細かい話はどうでもいい。俺はギターを構えると、ボリューム・ノブをフルに回した。
 同じようにハリーもギター……ムスタングを構える。これはキサラギからの借り物だ。
 メーカーは俺と同じくフェンダーではあるが、俺のストラトのいかつい感じとは対照的にコンパクトにまとまっているギターだ。名器だが、俺の趣味じゃない。だいたい、俺が謹慎をくらう原因となったギターを使わないのも気に食わない。もちろん、こいつなりに気を使ってのことだろうが、そういうソツの無さにロックはあるのか?
「さっきのペンタ、六弦ポジションからやってみろ」
「はい」
俺はバッキングがわりにオープン・コードのA7をストロークした。
四畳半の中でトライトーンを含んだサウンドが充満する。
それに合わせてハリーはボリューム・ノブをフルにし、基本ポジションのAマイナー・ペンタトニック・スケールを2オクターブ分奏でる。一通りの基本スケール(チャーチ・モード、と言うらしい)はキサラギから習っていたようだが、最も実用的なペンタトニックを教えていないのが気に食わない。もともとあいつがクラッシック・ギターから入ったからかもしれないが、ギターといったらペンタだろうが!
 ペンタトニック・スケールはギタリストがまず初めに覚える、若しくは出会う音階だ。視覚的にも非常にわかりやすい五音構成のもので、これを使わないロック・ギタリストにお目にかかったことはない。
 視覚的にも、と言ったが、こいつは一切指板を見ない。音感がいいのか、ムスタングに慣れていてポジションを把握しているのかのどちらかだ。後者の場合だったら厄介だ。他のギターに持ち替えた際に手こずる。このギターのクセはハンパじゃない。少なくとも俺には弾きこなせない。
「ハリー。今度来るときは、ムスタングじゃなくて、ミスミヤ・ギターもってこい」
「・・・えっ。はい、わかりました」
 理由を説明してやりたいが、いちいち口にするのは面倒くさい。というかロックとは違う。俺は実践主義だ。持って来ればわかるだろう。
 四ポジションのAマイナー・ペンタトニックを何回かおさらいした後に、今日のところはお開きとした。
 このままレッスンを続けても、あまり意味がない気がしたからだ。

『440Hz -Wandaring Wolves-』 ■第四話■「ハード・ボイルド」

「じゃあ、ありがとうございました」
「ああ、気を付けてな」
 ハリーが帰るのを見送った後、カラー・ボックスの上に置いてあるかカセット・プレイヤーのボタンを押し、録音を止める。盗み聞きしたい訳ではなかったが、どうしてもあいつに『足りないもの』の正体がわからなかった。故に、ハタから見たときに気付くこともあると思い、今日はレッスンでの演奏を録音していたのだ。
クソ、俺はこんなマメな性格じゃなかったはずだが。九十分テープをフルで録ったせいで、巻き戻しに時間がかかる。俺はその間に即席ラーメンを作ることにした。食いながら聴けばいいだろ。
台所、といっても四畳半の片隅にある流し横にあるガスコンロに火を着け、鍋を乗せる。ストーブ上のヤカンから、既に沸騰している湯を入れ、流し下の収納から袋ラーメンを取り出す。先週末に買いだめた塩味のものだ。以前は味噌味にハマっていたが、さすがに半年続けていたので飽きた。
今までは具なしでも気にならなかったが、ハリーの作るものを食ってからは、物足りなく感じるようになり、卵くらいは割り入れるようになった。もちろん半熟などは目指さない。生か固茹でかのどちらかだ。麺がほぐれたタイミングで卵を2つ割る。贅沢な気分になった。
ふとカセット・プレイヤーを振り返ったが、まだ巻き戻しをしている。ふやける寸前まで煮込んだのちに火を止め、鍋ごと座卓に置く。もちろん鍋敷きなどは置かない。長年直接鍋を置く習慣を繰り返していたせいで、樹脂製の天板は鍋の形に凹(へこ)んでいる。
まあ、グリップもよくなるからいいじゃないか。箸で卵をつついて、ハード・ボイルドになっているのを確認していると、テープの巻き戻しが終わった。
立ち上がって再生ボタンを押すと、シーーというノイズに混じってテープが再生される。俺とハリーのあいさつから始まり、ガタゴトとお互いにギターを用意する音が聞こえる。
俺の声ってこんなに低かったのか……と、思いながら座卓に座りなおして、鍋から直接塩ラーメンをすすりこむ。しばらく待つと、チューニングをしているのだろう、開放弦やハーモニクスの音が響く。ラーメンを啜りながら続けて聴く。
こうやって聴いてみると、俺とハリーの奏法には明らかに違いがあった。コード・ストロークもそうだが、フレージングにおいて差が顕著なのだ。
ハリーはミュートを駆使して小奇麗にフレーズをまとめる。それに対して俺のは良く言えばワイルド、悪く言えば乱暴なものだった。だが、音楽として聴いた場合、贔屓(ひいき)目なしで俺のものがはるかに心地よいものだと感じた。
 その差はなにか……それはノイズの扱いだ。俺はぼんやりとしながらもわかった。ハリーに『足りないもの』は意図したトーン以外はすべて許さないという機械的かつ傲慢なものだ。と、思う。性格のせいだろうが、潔癖過ぎる印象だ。逆に言えば、ハートに余裕のない証拠だろ、こんなもん。
「うあっち」俺は無意識に思い切り直接鍋に口をつけてスープを啜ろうとしてしまった。
じゃあ、なんで俺のギターは乱暴ながらも音楽的なんだ……?
考えるのは苦手だ。
 だが、自分のギターからヒントを引き出さないと、答えは永遠に見つからないだろう。

つづく

『440Hz -Wandaring Wolves-』1~2話

『440Hz -Wandaring Wolves-』 ■第一話■「足りないもの」

「ちゃう。そうじゃない」

 今日だけでもこの言葉を何回吐いたのだろう。気分が悪い。
 四畳半の安アパートの中で、男二人がパイプ椅子に座ってギターを弾いている光景自体も物悲しい。

 他人に物を教えるのは俺には向いていない。そんな事はわかっていたが、親友の頼みを無下(むげ)にはできない。
 『おまえにしか頼めない、おまえだから出来るんだ』という台詞(せりふ)が、かなり沁みたからだ。
 親友の名はキサラギ。今思えば、乗せられただけかもしれない。あいつはそういう男だ。しかし、いったん約束した以上はやらなければいけない。
 さて、できれば褒めて、前向きに伸ばしてやりたい気持ちはあるが、それ以前の問題だ。こいつには何かが決定的に足りない。
 クラッシック・ギターで多少は基礎を固めているし、自宅ではマジメにメトロノームを使って練習しているせいか、リズム感については俺よりもセンスを開花させている。なんだよアフター・ビートって。そしてすべてにおいて飲み込みも早い。
 そんな背景の中で「そうじゃない」というセリフを繰り返しても、俺自身にその答えが見つからない。そして、こいつは遠慮して言及しないが、常に明確な「解」を欲している。それがさらに自分自身を苛立たせているのだろう。

「……とりあえず休憩にするか。」
「はい……」

 俺にダメだしばかりされたせいで、消沈している。これだからガキは嫌いだ。めんどくせえ。
 こいつの通称はハリー。苗字はハルノだったはずだ。
 なんだかドイツ文学の主人公が由来とか聞いた気がするが、そんなもん知ったこっちゃねえ。俺の部屋には文庫本どころか教科書すらない。
 俺はボリューム・ノブを絞って、スタンドに愛用のストラトを置き、椅子を座りなおす。ライダース・ジャケットのポケットからハイライトを取り出し、口にくわえると、ハリーがすかさず自分のライターで着火してくれる。
 目上の人間に対しての礼儀として極自然な所作だし、自分にしてみても決して気分は悪くない。だが、なにか違和感があった。客観的にはこいつの姿が学生服に包まれたものから感じるものだったからかもしれないが、俺はそれを見慣れている。
 おそらく抱いた違和感は、ソツのなさから来たものだろう。俺が一口吸って煙を吐くのを確認すると、自分も煙草を取り出し火を着ける。どこか卑屈さや甘えを感じる。十六歳のガキに多くを求めても仕方がない。だが、こいつには「何かが足りない」と同時に「何かを持っている」と感じさせられるのだ。
 キサラギはそれを俺に埋めさせようとしているのかもしれない。頭のいいやつの考えなどわからない。単なる勘だ。
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『440Hz -Wandaring Wolves-』 ■第二話■「ストーム・ライダー」

「リッチーさん、お茶」
ハリーは石油ストーブにくべてあるヤカンから急須に湯を注(つ)いでお茶を淹れた。いろいろとソツがない。先週ギター・レッスンしてやった時にはメシまで作った。とはいっても冷蔵庫の残り物を具にしたインスタント・ラーメンだったが、俺が作る適当な分量のものとちがって、キチンと料理として食えるものだった。麺の硬さもほどよく、卵も絶妙に半熟に仕上がっていて旨かった。ネギやハムをいったん炒めて加えるだけで、あんだけ香ばしくなるのか。俺にはできない芸当だが、できるようになりたいとも思わない。
兎に角こいつは、俺にとっていろんな点で異質だ。ぐいっと茶を飲み込んでハイライトを煙草盆で消す。
「なあ、ハリー」
「おかわり淹れましょうか?」
「そうじゃねえよ。そういうのはいいんだ」
「そういうのって、要するに気を使いすぎるなってことですか?」
 俺はその時に感づいた。こいつはもともと気配りする性質(たち)だと思うが、キサラギになにか言い含められたのだろう。
「おまえ、キサラギに何か仕込まれたろ。リッチーは煽(おだ)てときゃあいい、とか」
「いえ、そんなことないです。『あいつはオマエにないもの持ってるから敬意を払え』とは言われましたけど」
 少し気分がよくなった。そうはいってもあいつの事だ。その辺りも計算ずくかもしれない。
「キサラギの意見もわかるけど、おまえの意志ってどうなんだよ」
 俺はこんなことを聞くようなねちっこい性格ではなかったはずだが、影でキサラギが何かを画策しているという妄想が止まらなかった。あいつを親友だと思っている自分がいるのに。この感情ははじめての経験だ。
「去年のクリスマスの演奏ですよ」
「あ? なんだって?」
「ぼくはあの時にとても感動しました。あんなに激しい動きをしながらも、機械みたいな正確な演奏で、それでいて熱量がすごい。びっくりしました」
 俺はさらに気をよくした。ハリーの目の輝きには偽りがない。
「ハード・ロックのライブ初めてだったんだろ? 音のデカさに圧倒されてたせいもあるんじゃないのか?」
「いいえ、そうじゃありません。音がデカいってことは、それを操る技量が必要なはずです。ミスがあったらそれも増幅されちゃうんですから。『心も強くないとできない』ってキサラギさんも言ってました」
 俺の気分は最高潮に達した。こいつが納得するまで練習に付き合ってやろうと思った。

つづく